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真性・社畜物語 「組織崩壊編」
⑭「役者セカンド」

そして後日、セカンドによる訂正の説明が行われた…。

「あれ(退職宣言)からやっぱり考えたんだけど…」

予定通りに役者セカンドによるくさい芝居が行われる。

「皆にはたくさん助けてもらったし、やっぱりここを離れるのは寂しい…」

皆のことを考えていないわけではないだろうが、退職をキャンセルした主な理由は『金』である。しかも今まで現場というツラい業務から解放されて、1日パソコンの前でのほほんと過ごしているだけで給料が発生するのだ。こんなにうまい話はない。普通に考えれば誰だって羨ましいし、場合によっては裏切り者扱いされてもおかしくはない。
しかし…

「副リーダー! これからも社畜病院にいてくれるってこと!? あ、…いてくれるんですか!?やったじゃん!ね?武道!」

ラッパーのようなお馬鹿かつ人情オバケのような職員からは逆に好印象を与える結果となっている。少なからず、セカンドはやることはしっかりやっており人望もそこそこある。前向きに捉えてくれる職員がいてくれてもおかしくない現状だ。

「あはは…。うん。そういうことになるね」

あはは…
こんな人工的な笑い方が出来るようになった…という言い方はおかしいかもしれないが、人との関わりがとんでもなく不器用だったセカンドをここまで育て上げたのは、ガーディアンやチェルシーを始めとした職員の「みんな」である。セカンドがここまで成長しなければ恐らく事務所への異動はなく、いずれ暴行によるパワハラか何かで訴えられて闇堕ちしてしまうルートに突入してしまう可能性大だっただろう。そんなセカンドも見てみたいが……。
兎にも角にも、セカンドはその「みんな」を捨てて事務所に異動する。シンプルにこれが事実である。大声で「違いますよ! この人、金に目が眩んで現場から離れるんですよ〜!」って叫びたいけど、○にたくないからそんなことはしない。

「皆と関わる機会は少なくなるけど…、これからもよろしくね」

セカンドが軽く会釈すると、職員室の中が拍手で包まれた。どさくさにまぎれて大爆音の放屁をしてもバレなそうなパチパチ音である。いかにセカンドが頼りにされていたのか、改めて実感する。

「はーい」

ん? マエノ(妻)が手を挙げている。
その光景を見て、同時に拍手が鳴り止む。
旦那の不倫についての進展報告か?

「次の副リーダーは誰になるんですか?」

あまりの唐突な質問に周りがザワつく…。

「ちょ、ちょっとマエノさん…! 何も今そんな話をしなくたって…!」

数少ない常識人のリーダー「せーり」が慌てて、フォローに入る。

「ということは決まってないのですね? 前の職場では後任者の紹介も含めて、異動の挨拶でしたけど」

マエノ節炸裂…。まあ確かに後任者は気になる。
しかしこんな急ピッチで物事が進んでいるのだ。
人事もまだ副リーダーを任命を誰にするか決めていない。

セカンドへの異動命令▶︎断わられる▶︎どうしよう、他に誰探そう…募集かけなきゃ…▶︎セカンド「やっぱ金欲しいのでやります」▶︎え…募集かけちゃったよ…

この数日でこれだけセカンドによって人事がかき乱されたのだ。副リーダーというあってないような役職のことなんて考える余裕もない。ちなみにこれは心配から仕入れた情報である。

「えへへ〜。じゃあウチがやろうかなー。副リーダーの後任とかカッコよさそうじゃん」

お前がなれるわけないだろ、ラッパー。

NEXT▶︎
セカンドの異動が確定!
副リーダー不在の現場はどうなってしまうのか…
そしてスレンダーに魔の手が迫る…!
次回「崩壊へのカウントダウン」

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