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>>273 続き

「さよならカントリー」 ⑥理由

とはいえ…。

「どうやってカントリーを引き止めるかだよなぁ。理由そのものが分からないと、それに対して自分達で解決策を考えてあげることも出来ないし」

そう。チェルシーの言う通り。
単刀直入に「何で辞めるの?」って聞いたところで、カントリーが果たしてそこまで心を開いていないバリカン一味に本当のことを話すのか…。
ましてや、バリカンに対しては敵意だって見せていたカントリーだ。これは難題である。

「直接聞いてみるのが1番早いんじゃ…」

黙れバリカン。どの口が聞いとるんじゃ。
早速社畜が懸念していたアイデアが飛び出してきた。

「あの…リーダ、あ、いやバリカンさん。それは私達が聞いても多分答えてくれませんよ…」

はざーどがやんわりとアイデアを却下してくれたが、ちょこちょこバリカンの旧役職名を言いかけてしまう癖は治らない。その度に苦い顔をするバリカンの顔が堪らない。

「あ! チェルシーさん、こういうのはどうでしょうか? 副リーダーとカントリーが話しているところをこっそり聞くというのは…?」

はざーど…お前相変わらず小癪なアイデアを生み出すのだな…。社畜も人の事は言えないが…… 。

「んー、それはダメだな。それで理由が分かったとしても、引き止める時にボロが出て不信感を感じさせてしまう。少しでもこの職場に残りたいと思わせるにはクリーンな方法じゃなければ…」

正々堂々なチェルシー。その姿勢は大好きだ。
しかし彼女だけ具体的なアイデアを出していない。元々、口より手が先に出る行動派のタイプだ。
「うーん…」と一同悩んでいるが、チェルシーだけが「晩飯何にするか…」と悩んでいるように見えてしまう。

そんな難航したやりとりを見ていたスレンダーがため息をつきながら口を開く。

「あなた達は『人の気持ち』を汲み取ることも1つの仕事でしょう? カントリーと仲良いのはセカンドだけ? もっと他にもいるでしょう? 退職宣言をする前に相談している相手もいるんじゃない?」

さすがスレンダー。でも社畜の気持ちも汲み取ってくれているのなら雑な扱いしないでくれよ…。

それを聞いたチェルシーが呟く。

「あーなるほど…。カントリーが相談しやすい相手か…。あ」

(カンちゃん)

いわゆるニックネーム。親密な関係の証だ。
カントリーのことをそう呼ぶ人物が1人だけいる。

「…バリカン、はざーど。武道に聞いてくれる?」

2人は首を思いきり左右に振り、
全力で拒否をしていた。

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