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1.1958年版のフィリップス曲線

>1958年に発表された最初のフィリップス曲線は名目賃金上昇率(ẇ/w)と失業率(u)の負の関係を示した。

これは当時のインフレ率が比較的安定していたため、敢えて実質賃金上昇率を算出する必要が無かったから。

2.マネタリスト・マークⅠが垂直のフィリップス曲線を提示

長期的に実質賃金は一定となり、名目賃金に対する錯覚は全て解消される。

3.日本の現状は実質賃金が下がり続けている、すなわちマネタリスト・マークⅠの言うところの錯覚が介在する短期の状態。

実質賃金低下により企業の労働需要が増え、労働需給が逼迫している。

1958年版の右下がりのフィリップス曲線上では、名目賃金上昇率がインフレ率に追いつかない局面での均衡点を示すことは出来ない。

右下がりで示せるのは労働需要だけ。

4.マネタリスト・マークⅠは、名目賃金上昇率がインフレ率に追いつくことで元の実質賃金水準と労働需給に収束すると言った。

だが、①第1次石油危機や今般のウクライナ戦争に誘発されたコストプッシュ・インフレは、地政学的なサプライ・ショックが原因なので、そのような外生的ショックが いつ解消するのか、今後どのようにリスクが変化して行くのかなど、地政学的リスク(サプライ・ショック)を正確に計測できない以上、元の実質賃金水準や労働需給への収束時期を はっきりとは見通すことは出来ない。

マネタリスト・マークⅠは、人々はインフレに徐々に適応して行くので、予想インフレ率も徐々に名目賃金上昇率に織り込まれて行くと考えた。

利上げをすればコストプッシュ・インフレの原因となった地政学的リスクを帳消しにできるという筋合いではないというのがマネタリスト・マークⅠの考え方である。

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金融機関は企業部門や家計部門などと異なり、資産・負債ともに貨幣なのであるから、インフレ(貨幣価値の変動)に対して基本的に中立性を維持できる筈なので、サプライ・ショックの前後でマクロ的な実質賃金水準が一定なら、金利を変更する意味が無い(ナンセンス)というのがマネタリスト・マークⅠの見解である。

https://i.postimg.cc/Z57jtx2Z/a-frontal-full-body-of-a-beautiful-21-year-old-blo-by-louisxxiv-dl024nh-414w-2x.jpg

②マネタリスト・マークⅠの垂直のフィリップス曲線は、そもそも地政学的なサプライ・ショック自体が錯覚であることを前提としている。

錯覚ではなく、地政学的リスクが現実の物となって、本当に生産要素が輸入できなくなり、二度と元の実質賃金水準や労働需給に戻れないことを想定していない。

地政学的リスクが現実の物となって、本当に生産要素が輸入できなくなる場合には、“椅子取りゲーム”が発生するので、名目賃金上昇率がインフレ率に追いつく保証はない。

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