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「初めての子ども参観」⑥

「副リーダーの娘さん来てるらしいよ」
「ええ!?うそー?見てみたい!」
「ママに似てムスッとしてるのかなー?」
天使ちゃん参戦の噂は社畜病院の職員にも広まる。

「…ほら。こう、すくうタイミングを…ホイ…あ」
破れる網。敗れるセカンド。
セカンドの金魚すくいのセンスはほぼ皆無だった。

「…おかー? 金魚別にいらないよー 」
天使ちゃん…おかーは多分君の笑顔が見たいんだよ?だからそっとしてあげといてほしいんだ…。

「んっ! あ。 ………んー。セッーノッ…あ。チッ!!」
いや舌打ちすんなよセカンド…。
次第に空気が悪くなっていく金魚すくいゾーン。

「せんぱ…」
「るさい! もう少しなんだから!!」
カントリーの心配を振り払うセカンド。
どんだけアソビにマジメなんだよ…。ニューギン。

「セカンド…さん。貸しな」
まさかの助っ人はチェルシー。
しかも子供の前ではしっかり「さん」付け…。
礼儀正しいぞ。確変にでも入ってるんかチェルシー!

「こうやって! こう!」
チェルシーがセカンドと天使ちゃんに指導をする。
『……』
まじまじとすくわれる様子を見つめるセカンド親子。
「ほい。次やってみ!」
セカンドに『すくうアレ』が渡される。

「………」結果は何も変わらない。そりゃそうだ。
『‎こうやって!こう!』なんて教え方でもし上達するとしたらそいつはきっとニュータイプに違いない。

「……だからこうやって!」
チェルシーがセカンドの後ろから手を回して二人羽織のような形で直接指導する。
要するにセカンドの手の動きはチェルシーが制御している状態である。
大の大人が白昼堂々くっ付き合って金魚すくい。
酔っ払いかなにかと思われても不思議じゃない。
「こう!」
チェルシーが金魚の乗った『すくうアレ』を素早く、お茶碗に向けてスライドさせる。

「…あ。とれた」セカンドがとっさに呟く。

周りからは大きな拍手が送られた。
酔っ払った人からの歓声を聞こえてきた。
いつの間にかその必死さと異様な光景により、沢山のギャラリーを惹き付けていたのである。

「えー! なにあれー?」
「娘さんと? ってあれチェルシーさん!?」
「副リーダーとチェルシーってこの前…喧嘩…」
「副リーダーが笑ってる!! あんな顔するんだー」
そのギャラリーの中には社畜病院の職員もいた。
セカンドお母さん作戦で活躍したのは天使ちゃんではなく意外にもチェルシーだった。偉いぞチェルシー!

「………」
だがその中でただ1人不満気な表情をするはざーどがいたことを社畜は見逃さなかった。

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