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ラッパー制裁編⑪

「落ちこぼれ」
この言葉に即座に反応したのは武道であった。
我慢の限界に達したのか、チェルシーに飛びかかろうとする。

「…武道…いいよ」
がしかし、武道が1歩目を踏み出したところでラッパー目の前に立ち塞がる。

「もういいよ…。仕事しよ。仕事」
「…………?」
ラッパーのまさかの発言に驚く武道。

「…………?」
拍子抜けした表情のチェルシー。

言葉より拳で語り合うタイプの人間はリアクションも似ている。
その後は何事もなかったかのように黙々と仕事をするラッパーと武道。
耳を潜めると「…ゼッテー、○ロス」 「ゥス」 と物騒な会話が聞こえる。

「ほら〜やっぱりラッパーさんもいい人ですし、武道さんも友達想いなんです! 偏見は良くないですよね〜??」
ラッパーのことを「犯人」と決めつけている職員等にわざと聞こえるように話すカントリー。

「シッー! もう! そんなこと言うから余計に事が大きくなるんでしょ! 皆?気にしなーい!」
ガーディアンがカントリーの挑発的な失言をフォローする。まさに皆のお母さん。
40代なので絶対に乳輪は黒いと思います。

ってあれ…。
チェルシーがきょろきょろしながら休憩室に入っていく。何だろう。1人エッチでもするんかな…。
後を追い、隣の部屋で盗み聞きモードになる社畜。

「……さすがになんか大事になりすぎてないか?
あそこまで落ち着かれると逆に何か…気持ち悪い」
チェルシーが何か話している。

「別にいいじゃないですか。結果的には大成功です。ガーディアンさんには悪いけど、あの武道も巻き込んでくれたのはとっても有難いと思う」

この酸っぱい匂い…もとい辛口の口調は「はざーど」だ…。2人だけで秘密話ですかい…。

「リーダーを騙すのはさすがに気が引けたけどね…。でもこれもリーダーが望む職場の正しい環境作りのため。チェルシーさんも分かりますよね?」
……ん?どういうことだ。

「……だからといって、あいつに濡れ衣着させるのはさすがにやり過ぎだって!」
濡れ衣…。はて…?

「チェルシー? それ以上に私たちは彼女らの悪ふざけに振り回されてきたんだよ?
それに比べたら『私のサイフからお金が抜かれた』作り話なんて可愛いものじゃない?」

…はざーどの口調が変わった。
尚且つ、恐ろしい事実が判明。
『自作自演』だとは…。

「キレるなよ…。あんたの気持ちも分からないこともないけど、このことがリーダーに知ら…あ゛」
んん??

「……それほんと…なの? はざーど? 」

この声は…バリカン!!

▶︎もうちょっと続く
「次回 バリカンの選択」

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