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「真性・社畜物語」⑤「昨日と同じなのです」

本日の担当は副リーダーのセカンドである。

そもそも何故こうも研修担当が変わるのか…?
それはバリカン政権の頃からシステム自体を変更したからである。バリカンがリーダーの頃は研修担当はほぼ固定されていた。少人数でがっちり研修したほうが何かと効率が良いからである。

・どこからどこまでを教えたのか分かりやすい
・担当と親密になれば新人も心を開けやすくなる
などなど…

良い例がセカンドとカントリーの関係である。

しかしそのシステムには欠点があった。
「担当の思想を植え付けやすい」ということ。
その例がバリカン信者である。
出しゃばりなバリカンは自ら研修担当を喜んで引き受けていた。そうして信者達を量産していた。
「せーり」もその被害者だ。

そして時は流れてリーダーが「せーり」になり、担当固定システムは廃止。できるだけ沢山の職員が付いてあげようということになった。
それぞれの職員の良いところを新人に伝授すれば、きっとより良い職員が生まれるに違いない。
そんな願いをこめて担当シャッフルシステムが誕生した。立案者はなんとセカンドである。
その理由は今後語る「さよならカントリー編」で明らかになる予定であるが、忘れてたらごめんなさい。

あれ? 朝礼前にセカンドとチェルシーが職員室の影でコソコソ話している…。
社畜のダンボの耳スキル発動…。

「…ぇ!? 今日も私がやんの??」

「…ゴメン…。いや、あのさ…私だとあの新人ね…潰れると思う…」

セカンドがまさかの弱気な発言…。

「…でもよぉ、カントリーと似てるタイプだから大丈夫だって! 得意だろ?ああいう子」

セカンドのことを誰よりも理解しているようで、あまり理解していないチェルシーが説得を試みる。

「…違う。カントリーはもっと根性があった。だから私の研修を乗り越えることができた…。でもあの新人は気持ちが弱そうだし、『芯』が見えない。これだけは譲れない…といったようなものが見えない…」

「……? 何言ってるのか分かんないけどよぉ、そこまで言うんだったら変わるよ。一応上司の命令だからね」

大丈夫だチェルシー。社畜も何を言ってるのかよく分からなかったけど、確かに未経験はとても前向きに頑張っているのだが、何のために「頑張っている」のか…いまいち分からない。前職がベンチャー企業で、何故未経験のこの業界に…。
そこまで考えた上でのセカンドの発言なのだ。

「ごめんねチェルシー。ただでさえ職員が少ないから、私の研修のせいで辞められちゃうのが怖いっていうのもあるんだけどね…」

だったらその性格を直しなさいセカンド。

そんな打ち合わせを経て本日もチェルシーが担当した。

セカンドの担当辞退の選択は正しかった。
しかし結果的に言うと未経験の退職時期を少し先延ばしにしただけだった…。

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