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「真性・社畜物語」⑯「御手洗なのです」

「アアアアァ!」

更衣室のほうからお猿さんのような声が聞こえる…。間違いなく彼女だ…。

「はぁ…」

スレンダーは呆れながら、よっこいしょと腰を上げて退出。未経験の様子を見に行ったのだろう。

…。未経験が寝ていた布団が目の前にある。

気づけば社畜は布団の中に入っていた。
まだ何となく温もりはある。生々しい雰囲気だ。
枕の匂いを嗅いでみる。スッーーーーーっっ!! はぁ!おっさんみたいな匂いがしました! 変な汗かいてたのかな? 若干シーツも湿ってるし…。

「センセ、センセ!トイレ!トイレ行きたい!」

外から未経験の声がした。休憩室の扉を開けて外を見てみると、スレンダーに車イスに乗せられて多目的トイレに向かう姿を確認。
もちろん後をついていくことにした社畜。
多目的トイレと男子トイレの壁は1枚のみ。
しっかりと排泄サウンドを楽しませてもらうぜ!

多目的トイレに入ったことを確認してから、男子個室に入り壁に耳を当てる。触れたタイルがキンキンに冷えてやがるっ!

「え? センセ? 先生も中に入るの?」

「当たり前でしょ! あんた足ガクガクな状態でまともにズボンとか下ろせるの!? 転んで怪我して困るのはこっちなんだからね!ほらっ! 手すり掴まってて! っ! ジーンズキツキツだし…」

スレンダー滅茶苦茶不機嫌だ…。
しかも未経験、先生にトイレのお手伝いさせてるよ…。社畜もしてもらいたいよ…。

「よしっ! ほら! 座っていいよ!」

「あの…センセ? まだいるの?」

「当たり前でしょ!あんな絶叫されたら、もうあんたを1人にすることなんて無理でしょ!あと私は看護師のスレンダー!覚えてないなら今覚えて!先生でもないし、あんたと同じここの職員で同僚!つまりは仲間なの! だからもっとしっかりしなさい!若いんだから!」

「そっか。…ありがとセンセ。ごめんねセンセ」

なんだかんだ向こうのトイレの中は青春物語が繰り広げられてるようだな…。と、その時…

ブリュ…ブリィィィィ!!

まさかの(大)かよ。しかもかなり緩そう。
未経験先輩半端ないっす。

「…センセ、終わったよ? また手すりに掴まればいい?」

「……いや、できるなら全部自分でやって」

一気に塩対応になったスレンダー…。
さすがに目の前で糞されたら引くわな…。
愛弟子のバリカンの時は喜んでシャワーのお手伝いしてた気がするけど、未経験は愛弟子でも何でもないからな…。トイレが終わって鉢合わせになっても困るからそろそろ退出しようかな…。

休憩室に戻る途中、玄関にチャラチャラした金髪の見知らぬ女がいた。

「あのすみません…。うちの姉貴がお世話になってます」

未経験シスターきたぁぁぁぁ!!!

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