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「さよならカントリー」⑭酒

空いたグラスがテーブルの端に集まるペースはかなり早かった…。主役のカントリーやラッパー、チェルシーといった、いかにも酒が好きそうな連中からどんどんとグラスがこちら側に流れてくる…。

そう…。角席の社畜と「はざーど」が店員さんと連携してグラスの受け渡しを行っている。くそ…社畜は酒が弱いこともあり、あまりこういう席は得意じゃない…。それなのになぜこんな雑用なんかを…。

「みなさん…よく飲みますね…」

向かいの席の「はざーど」がグラスを横流ししながら社畜に話しかける。会話をするのはかなり久しぶりだ…。同じ心境同士、心が通ったのかも…

そ…そうでs

「はざーど、それ私が頼んだやつ!取って!」

はざーどの隣席のバリカンが届きそうで届かない、ギリギリの距離のグラスを指で示しながら訴えかける。せっかくいい話が出来ると思ったのに…

てかバリカン…めちゃくちゃ酒臭い…。
今更気づいたが、かなり酒の進みが早い。
席も席なので話す相手があまりいなくて黙々と飲んでいたのか…。にしても酒が入ると強気になるのね…。リーダーだった頃の姿を思い出す…。

「あ、せーり! 何ボッーとしてんの!カントリーが楽しむために今日は飲むんじゃないの!?ほらはやくグラス空けてっ!」

続いて「せーり」に対しても強い口調のバリカン。恐らく悪酔いしている…。

「あ…いや…じゃあ、そう言うなら頂きます…」

せーりは「自分から言ったことだしなぁ…」というような困った表情で目の前のグラスを手に取り、グイッと一気にレモンハイを飲み干した。
小柄な身体なのにそんな無理して大丈夫か…。

「おっー!!いいねぇ!さっすが新生リーダー!ほらもっと飲んじゃって〜!!」

せーりの一気飲みの姿をチェルシー達が見逃しているはずはなかった。彼女らは更に「せーり」に飲酒を強要する。側近のマエノも面白そうにそれに同調。そしてこの一連の元凶、バリカンは…

「………」

沈黙。いつものテンション下げ気味な彼女に戻ってしまった。地味に「新生リーダー」発言が心の傷を抉ったのかもしれない…。

しばらくして……

「あはは…、もうギブです…。これ以上は…」

せーり撃沈。もういつ吐いてもおかしくない状態へ突入。

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