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「さよならカントリー」⑯せめてもの収穫

この財布…。どうしてくれよう…。
向かいの席の「はざーど」はバリカンのお世話でこの財布には気づいていない。酒飲み軍団も「せーり」が途中退出したことすら気づいていない…。

うーむ…。少しだけ拝借!!

社畜は財布を手に取り、居酒屋のトイレに走る。
物が派手な色した長財布なので、手に持っていると怪しまれる確率大。
よって社畜のパンツの中にグッと押し込み、はみ出た部分をシャツで被せてカモフラージュ作戦。
股間の皮に素材の皮が当たり、ひんやりとした感触が堪らない。

いざ個室に篭城…。

「ヴぉぇぇ…、ェー…」

隣の女子トイレから聴き心地の良いサウンドが流れる。せーりの嘔吐音なのかは確証はないが、一連の流れからするとその確率は高い。しかし今はそれどころではない…。この財布が無いと分かったら少し面倒…。ちゃっちゃっと済まさねば…。

社畜のお財布チェックタイムスタート…

『現金約3万円』
社畜はパ○ンコで結構稼いでいるので間に合っています。そもそもお金を盗るのはギルティ。

『クレジットカード』
同じくそういう関係のは間に合っています。

『免許証』
ふーん…。意外に社畜の家からそう遠くない所に住んでるのね…。住所的には一人暮らし…か…。

『写真』
彼氏と幸せそうな写真…。職場に落ちていた写真はこの財布から落ちたものなのか…。

『手紙』
彼氏からの手紙。汚ぇ字だな…。
もし時間があれば今からう○こして、この手紙でお尻を拭こうかと思いましたよ…。

「ねぇー、大丈夫ー?」

女子トイレからガーディアンの声が聞こえる…。
やはり嘔吐していたのは「せーり」だったか…。

「でましたぁ…。おっけーです…今出ます…」

まずい…。社畜も早く戻らなければ…。すぐさまパンツの中に財布を収納して退出。排尿後なので、もしかしたら社畜黄金水が付着してしまっているかも…。すまそ。

無事にせーりが戻る前に帰還することに成功…。
さりげなく「せーり」の財布を放り投げて、何事も無かったかのようにツマミのポテトを頬張る。

…お別れ会はただの酒飲み大会と化している。
社畜もお酒が飲めれば、もうちょっと陽気に皆と過ごせたのかな…。ラッパーにも自信持って告白出来たのかな…。なんて思うと何故か切ない…。

「ちょっとおしょんしょん」 →トイレ(小)のこと

謎の造語を呟いてラッパーが出口のあるこちらへ向かってくる。もし許されるならばハグしたいが十中八九ギルティなので見守るしかない…。

「ん…。なんだこれ」

ラッパーは何かを手にする。あ、せーりの財布…

「…すみません、セカンドさん、ガーディアンさん助かりましたぁぁ…。あ、それ私の…」

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