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真性・社畜物語 「組織崩壊編」②

これは①のやりとりが起きる約1ヶ月前の話…。

「えーっと、それでは新しく今日から皆さんの仲間になります…陰ちゃんです。自己紹介どーぞ!」

せーりが朝の朝礼で恒例の新人紹介を行う…。

陰ちゃん…。
せーりと同じ短大卒でこの業界にやってきたピッチピチの20歳。しかしこの社畜病院が初めての職場ではない。ここに来る前はガーディアンも勤める同系列の病院にいた。つまり今回は異動ということになる。理由はこちらがかなりの人手不足ということが主なのだが、その他にも色々と訳ありなのだ…。その訳のうち1つは…

「ほらー! 陰ちゃんー!! 頑張って〜!!
ハキハキと自己紹介してー!!」

同じく陰ちゃんと共に異動してきた陽ちゃんが同期の仲間へエールを送る。しかも何気なく職員の中に紛れ込んでいる。しかしその行動からしてもう陽ちゃんはぶっ飛んでいるのだ。

「…おまえ、別の部署の人間だろ。ここにいていいのかよ…」

チェルシーが早速ツッコミを入れた。
そう。陽ちゃんは陰ちゃんと共に同じ職場から異動してきた助っ人なのだが、配属は違う部署になっている。配属先はこちらとほとんど交わることがない「運転手チーム」というところである。

「…。帰って。邪魔だから」

セカンドが職員室の内線受話器を手に取り、「運転手チーム」へ連絡を入れようとする。

「わわわ…、待って! 心配で来ただけなんです!上司の人にも『他部署へ挨拶してきます!』ってちゃんと許可とってますから!」

陽ちゃんが必死で弁明する。

「はい…そちらにお返しします。では」

無情にもしっかりとチクるセカンド。

「…というわけで、皆様ご指導よろしくお願いします」

そんなやり取りの中、陰ちゃんの挨拶はさらっと終わってしまった。驚くことに彼女は全く緊張する様子もなく、おまけに陽ちゃんの飛び入り参加にもほとんど動じなかった。肝が据わっているのか、元々感情が薄い人物なのか…。
彼女に興味が湧いてきた。
ほら、今まさに陽ちゃんがセカンドとチェルシーに連行されているっていうのに全然平気な顔で見てるもん…。

話は戻るが、陽ちゃんの「陰ちゃんへの想い」がかなり強すぎるのが問題点の1つである。その想いにはしっかりとした理由があるのだが、それが明らかになるのはもう少し後のお話…。

そして陰ちゃんも陰ちゃんでコミュニケーションがかなり機械的であることが問題視されている。例えるなら人間味のないセカンド、もっとメジャーな表現で例えるのなら「多分3人目の綾波○イ」といったところだろう。

そんな取り扱いが難しそうな2人をセットでこちらに送り込んできたことに対して、彼女等の元職場である通称:アナザー社畜病院へ感謝すべきなのか憎むべきなのか…。

とりあえずリーダーである「せーり」の苦悩の日々が幕を開けた…。

NEXT▶︎
陰ちゃんに対して過保護な陽ちゃん!
社畜的には陰ちゃんと交渉したいけど、まずは貴様からだ!!
…ってあれ、何そのツラい過去。
しかもあれ、君働いて大丈夫なん…?
次回 「病」 に続く

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