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真性・社畜物語 「組織崩壊編」
⑪「世の中、金さ」

職員玄関口にて、意外な2人組に声をかけられた社畜。いや…意外でもないか…。当初の予定ではこの2人は共に事務業務をする同僚となるはずだった…。しかし今更、社畜に何の用が…。

「ちょっと…来てくれませんか〜?」

心配から呼び出された…。もう日が沈む…。
いつもなら定時退社しているはずの心配なのに…。これはよっぽどのことに違いない。隣にいるセカンドは何も喋らない。社畜は〇されるのか…。

暗闇の患者支援室に案内され、まず口を開いたのはセカンド。

「今日の朝礼の話。覚えている?」

セカンドとは面と向かって話す機会が少ないのでかなり緊張する。生々しくムチムチとした体格も含めて、更に圧を感じる。相手が女性だからいざとなったら力で何とか…なる相手ではない。今までの蛮行を間近で見てきたからよく分かる。がしかし、社畜だって怒られるようなことはしていないはずだ…。ここは堂々といこう。

アイ リメンバー。覚えてますとも。皆を見捨てて寿退社。自分だけハッピーエンドですか。デカケツだけに良いケツ末ですね。
(実際には「はい」としか言ってません)

「それなんだけど…私、事務職に異動する。だから退職の話は無しにしたいの」

………。
よく分からないけど結局予定通りってこと…?
それならそうと、別に社畜にそんなこと言わなくても…。改めて皆の前で発表すればいいのでは?セカンドの考えが読めない…。
社畜が不思議そうな顔をしていると、突然心配が話に割り込んできた。

「う〜、全部わたしのせいなの〜。社畜さんは始めからセカンドさんが異動することを知っていたじゃないですか〜。それがいけないんですよ〜」

……。余計意味が分からない。それが何だ。

「…。いい。私が説明す…、します…」

セカンドが慣れない敬語を使う。そうだな一応心配は今後の上司だもんな…。可愛い。

まぁ要はこういうことらしい。
・現場の皆はセカンドの異動のことを事前に知らされていない。なので今朝の退職発表に何の疑問も持たなかったはず(驚きはするが)
・しかし社畜は「何故か」異動することを事前に知っていた。その話は心配から聞いた。これが問題である。
・異動命令については従う気はあったが、旦那(イケメン君)が主婦になれと言うので皆に発表する直前で蹴り、退職を決断。本日の発表に至る。
・しかしその後、BOSSから呼び出し。「残ってほしい。現場が暴走する。いるだけで抑止力になるからお願い。その代わり『高待遇』でいくから」と再オファーを受けた。その熱意に負けて異動を決意した。
・でもそんな理由を現場に話したら更に混乱する。だから「体調不良」という理由で、デスクワークに専念すると明日の朝礼で話していきたい。「ここを離れるのはやっぱり寂しい」という理由を添えて。

結論:社畜は今回の件について他言無用で。

……。複雑でややこしい文章で申し訳ないが、社畜はこの時本当によく分からない気持ちだった。理解が追いつかない…。しかし、なんとなく分かったことはセカンドは「高待遇」に惹かれて再オファーの異動を決意した。1度は皆のことを捨てたくせに…。結局は金か…。しかも保身ときた…。見損なったぞセカンド。
よし。社畜も一応、人の心は持っている。ここでセカンドに問おう。

残された皆を一体なんだと思ってるんですか!?仮にも副リーダーでしょうが!答えなさい!
(本当は「いや…しかし…」と言っている)

だが答えたのは心配だった。

「…社畜さん、あの真夜中の事務所で本当は何をしていたんですか?」

NEXT▶︎
完全にノーマークだった心配からの爆弾発言。
ダメだ…。この場を切り抜けるカードが無い…。
ほら、時間が経つ事に社畜を見る目が変わっていく…。やめろ…やめろぉぉぉ!
次回「服従」

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